工匠からのお便り
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工匠大工の小林です。
今回、総反り造りの入母屋屋根を担当させていただきました。
本来屋根は、ドーム型やかまぼこ屋根(R屋根)のような特殊な形状でもない限り、ほとんどが直線で構成されています。
一方で神社・仏閣等は、カーブのついた曲線で構成されている屋根もあります。
このカーブのことを「そり」や「むくり」といいます。
反り屋根は屋根の面が反ったもので神社・仏閣などで見ることができます。
中国大陸から伝わった建築様式で、見ていると格式や荘厳さを感じると思います。
むくり屋根は屋根の面が膨らんでいるもので、有名な建築物は桂離宮です。
日本独自の建築様式と言われています。
丸みのあるむくり屋根はその美しさから公家の世界にも広まったそうです。
今回担当させていただきました、総反り屋根とは軒反りの一種で、軒先の先端が全長に渡って反り直線部分がない形状のことを言います。
直線部分が無いので、単純に寸法を出すことも計る事も出来ません。
そこで、社寺の基本でもある原寸図を書いていきます。
原寸図は名前のとおり1/1の、リアルスケールで図面を起こします。
神社やお寺の屋根のように軒が反ったり、屋根が弛んだりといった曲線を決定し製作するために原寸図が必要になります。
なぜそこまで原寸が大事と言いますと、曲線形状の部材を製作するにあたり、曲線の検討、決定、曲線の型板を作るために必要です。
社寺建築の屋根のように軒が反ると、屋根面が弛むことで屋根面はねじれを持った曲面になります。
この曲面を製作するために規矩図が必要になります。
規矩図を原寸で書くことで各部の高さを実測することができます。
この原寸図を正確に書くために規矩術という技術が用いられます。
毎回、寸法も形状も違う、仕上げが瓦か銅板かでさえ変わる。
とても大事な作業になるので気が引き締まります。
今回は実際あるものを再現するので、図面等がなく実測してきたものを原寸図におこして型取り、製材等を進めていきました。
基準になるのは、原寸でしかないので形を作るのに何度も何度も確認しました。
それでも、不安が取れなければ模型などのサンプルを作り答え合わせをします。
この先、全く同じものを造る事は極めて少ないと思いますが今回勉強して経験した事を忘れずに次回に繋げるため予習、復習を繰り返し日々精進して行きたいと思います。
今回、この機会を与えて下さったお施主様に感謝でいっぱいです。