工匠からのお便り
blog
blog
松戸市、市川市、宮大工が手掛ける注文住宅・古民家再生の工匠、広報担当です。
皆様こんにちは。
カメラを持って工場を回っていると、宮大工さんの手元の作業が目に入り、お邪魔と思いつつもクローズアップ。
クレーンで移動させるほどの大きな木材を削る一日もあれば、細やかな宮彫に集中している時もあります。社寺建築には実にたくさんの彫刻が施されており、その一つ一つに古くから伝わる想いや願いが込められています。社寺は、宮彫りの高い技と意匠性が加わることでより美しく荘厳な建造物となります。宮大工の幅広い技術力には本当に驚くことばかりです。
この日、彫刻されていたものは、社寺の屋根に取り付けられる「懸魚(げぎょ)」という飾り板の中央に取り付けられる彫刻で「懸魚六葉(げぎょろくよう)」の部分でした。懸魚というのは、字の通り魚を懸けるという意味で、屋根の三角に合わさる部分に取り付けられます。囲炉裏に見る自在鉤も魚がモチーフになっていますが、どちらも水に由来する魚を用いることで、火に弱い木造建築を火災から守る火伏せのまじないになっているそうです。しかし、社寺に見る懸魚は魚にみえません。中国から伝わったときには既に抽象化されていたようです。魚の尾びれをイメージしていたり、うろこを模している等、諸説あるようなので名残りはあるのですね。
▲画像は懸魚
六葉、中心の菊座は懸魚の中央に取り付けられるもので、酒樽の栓が閉められている様子がイメージされています。こちらも懸魚同様、栓を開ければ水が注がれ火から建物を守るという火伏せの念が込められています。
▲六葉(六枚の葉や画像のような六角形など)菊座(中心の菊の花) 突き出た棒は酒樽の栓のイメージ
▲屋根に取り付けられた懸魚。中央に組み合わせられた彫刻が六葉。
こうして加工工程を見ていると、本当に手間と時間をかけて物づくりをしていくのだなと改めて感じます。こうした丁寧な仕事が何百年も朽ち果てることのない強い建造物を造り上げ、各所にほどこされる彫刻に込められた想いや願いが社寺の尊厳をより見事で美しいものとする。そして、人々の心を惹きつける厳かな場所になっているのだと思います。
皆さんも社寺を巡ることがあったら、是非、願いと共に施されている細やかな彫刻の数々をご覧になってください。大きな社寺の大きな屋根の一番高いところの、手のひら程の彫刻です。でも、見上げてみたら、宮大工や宮彫師達の「粋」を感じるかもしれません。
過去ブログも是非☞ https://www.shimousa-kousyou.com/blog/blog-6-c073c6「虹梁」
https://www.kousyou-kominka.com/blog/blog-6-939705「囲炉裏で和暮らし」
松戸市に本社、工場を構える宮大工集団の工匠です。社寺建築、住宅建築、古民家再生、オーダーメイド家具や建具、工場ではいつも大工たちが働き、動き、技を磨いています。これからも作業の一部を掘り下げながらレポートしていこうと思います。