工匠からのお便り
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職業「大工」の現状を憂うことは簡単ですが、職人としてまた大工としての矜持を守り続けるため、
弊社が何を考え、何ができるのか…
特に大工を志している方に知ってほしいことをまとめてみました。
◆◆◆粋な仕事「大工」◆◆◆
20年前、大工・職人は子どもたちの憧れの的で、なりたい職業ランキングでも必ず上位でした。
近所のおじさん(職人)が、自身で考え、材料を揃えて、工具を使いこなし、手際よく造る。
20年前はそんな光景が日常で、カッコ良く映った。
そんな職人さんが身近にいて、仕事に誇りを持っている。
ただそれだけで、子どもたちを魅了する職業、それが職人であり大工。
それがここ最近は職業として大工を選ぶ人が年々下降…、寂しい限りです。
それは何故か…、連日自問自答を繰り返し、考えてみました。
◆◆◆大工の行く末◆◆◆
大手ハウスメーカーやローコストメーカーなど建築業界のほとんどにとって大工は「下請け」であり、
その建築会社に工事をする人(施工者)がいないのが現状で、いるのは家を売ることが目的の営業と現場監督。
現場監督は、下請大工が指示通り施工しているか、間違いを起こさないかを見守る監視役のこと。
そして誰でも住宅が手の届くようになったプレカット加工。(※1)
時代に必要とされて、大工の技術に頼らず、誰が建てても同じ品質になるようにした代物です。
これにより建売大工さんは技量を求められず、2年もすると独立だって可能になりました。
しかしながら、技量を求められない建売大工さんは、単なる「組み立て屋」ではないでしょうか。
更に最近では、大手に限らず地場工務店も加工場を持たず、大工が外注なのは珍しくありません。
もう既に、自分で墨付けし、手加工できる職人はほんの一握りです。
本当に問題なのは、ここから…
その1人前の大工を雇用せず、外注として受注量に対する調整弁としました。
1日あたり1万数千円や、中には1万円以下で働いている。
しかも移動のトラックのガソリン、保険はその中から賄わなければならない。
これでは生活できない、夢もなくなる。成り手がいなくなるのは当然のこと。
これ以上、大工を苦しめないでほしい。
弊社は下請けでなく、大工を社員として直接雇用することで仕事に対する誇り守りたい。
※1.プレカット加工(工法)
プレカットとは、住宅建設に用いられる木材を工場であらかじめ機械で加工しておいて、現場ではほぼ組み立てるだけという工法を意味します。これに対して、木材1つ1つの加工から組み立てまでを建築現場で行っていく、大工さんや職人さんの手作業による伝統的な従来の工法もあります。
プレカット工法は、工場であらかじめ木材を加工し、現場ではほとんど組み立てるだけとなるので、建設期間が大幅に短くなります。そして、工期が短くなることにより、人件費コストを抑えられることにもつながります。また工場の機械で加工していくため、常に安定した加工品質を期待できます。
反面プレカット工法の場合、機械による加工となるため、複雑な継ぎ手などの加工が難しくなります。近年では、単純なものだけでなく、そうした複雑な加工が可能な機械も開発されてきていますが、まだまだ広く使われるまでには至っていません。
プレカットの場合、現場での加工を出来るだけなくそうとするため、あらかじめ余裕を持って加工していきます。逆に、大工さんによる場合、現場の状況に合わせて、機械加工ではできない1つ1つ手刻みによる正確な調整をしていきます。
数多くの木材に触れ、手を加えてきた熟練の大工さんであるからこそ、それぞれの木材の特徴、個性に合わせて、それらを活かしながら加工していくことができます。その反面、プレカット工法では、どの木材も単一の木として、1つ1つの特徴を活かすということはありません。
プレカット工法を否定するのではなく、それぞれにメリット・デメリットがあるということをご理解ください。
◆◆◆自社責任施工の意味◆◆◆
元請会社になることで、お客様の顔が直接見え、自身の持つ技術を全力で発揮する。
何のために自己研鑽し続けるのか、ここに答えがあります。
責任施工とは、工事前の調査やプラン提案、設計、見積りから施工に至るまで、
すべての工程を一社で行うこと。
そうすることで、責任に対して終始一貫されることができます。
ここにはお客様との信頼関係が必要となります。
まずは信頼と期待を寄せていただくこと、
そしてそれ以上の成果物でお応えすることで初めて継続することができる考えます。
そんな好循環を生むためには、大工一人一人が感謝の気持ちを持つことが非常に重要です。
当たり前だと思っていることが、当たり前でないことも数多くあります。
では、どのように大工は仕事に対する感謝の心を育むのか…
それは、厳しい修業期間にあると考えます。
簡単に手に入れられるものは、簡単に手放します。
人間の心理です。
学ぶことに貪欲になり、同じ現場は二度となく、今ある環境に情熱を燃やす。
それを継続して体で覚えて、初めて一人前になります。
法隆寺宮大工棟梁_西岡常一氏の口伝では…
・「体で覚える。優れた仕事を見て、それを盗む」これが基本。
・「口より先に手」理屈ではない。
・「体に仕事を染み込ませるしかない」だから教わる方も、教える方も必死。
◆◆◆結びに◆◆◆
モノづくり大国日本、それは先人たちが築き上げた歴史であり、文化です。
日本は世界では例がないほど、老舗企業が多い国で、
世界最古の企業は、ギネスにも載っている社寺建築の金剛組(大阪)です。
こうした歴史の長い企業が多いということはモノづくりにおいて非常に重要な要素になります。
企業が長く続くということは、技術が長く継がれていくということでもあります。
だからこそ弊社は急激な企業発展ではなく、一歩一歩着実に
強くて堅くて素直な木曽桧の年輪のように、きめ細かい成長を遂げたいと考えています。
木と木を継ぐ技術 × 人と人を紡ぐ継承
これらを繋ぎ、お施主様の理想を実現し、大工が輝き続ける会社になる。